孟嘗君を読んでから、宮城谷さんの作品に興味を持ち、順番に読んでいきました。
それまでは、日本史もの中心で、中国といえば三国志しか読んでいませんでしたが、宮城谷さんの小説を読み、中国春秋戦国時代にはまっていきました。
この時代、有名な人物、故事成語が多数あります。
とはいえ、ほとんどの作品は、面白いと言えば面白いのですが、あまり記憶に残っておりません。
その中で、「楽毅」は、個人的に凄く面白く、何度か読み返しました。そのため、今でも記憶に残っています。
内容
主人公:楽毅(がっき)
中国の人物。
小国、中山(ちゅうざん)国所属。
三国志で有名な諸葛孔明が憧れた人物です。
(楽毅が燕王から熱心に誘われて燕国にいったように、諸葛孔明自身もそういう状況に憧れ、国に誘われて、表舞台に上がることを待っていた→三顧の礼に繋がった、ともいわれています)
楽毅は、斉という国に留学中のところから始まります。
父は中山の重臣であり、身分は高い。
見聞を拡げるため、当時、大国であり、学が集まる斉へ勉強に行きます。
そこで、楽毅の人生に多大なる影響を与える孟嘗君と出会います。
当時、中山は、趙、という国から攻められる危険がありました。
当時の趙王は、合理的で、様々な改革を行い、力をつけていました。
楽毅は、中山国が、危機意識を持たず、のんびりとしていることを憂えています。(これを心配していたのは、楽毅の父、楽毅、他数名、と少数の人間のみ。楽毅は、斉という国から孟嘗君を通して、中山を援助してもらおうとしていた)
①小国対大国
小国が大国に立ち向かう、というのが基本的な状況です。
楽毅が所属する国は、基本小国であり、敵は大国。
・中山と趙
これは、結果として、趙に敗北するのですが、
小国中山が、強国趙に立ち向かう展開です。
中山は、王を始め、無能が集まっていたのですが、太子、楽毅、楽毅の父、極少数の臣、が国を憂え、必死に戦う姿が描かれています。
彼ら一人一人が、本当にかっこいいです。
・燕と斉
中山国は、滅びますが、その後、楽毅は燕に所属します。
当時、燕は弱国。そして以前、燕を荒らしに荒らした斉を憎んでいました。
斉は大国。
斉に勝てる国は、ない、と言っても過言でない状況です。
燕は、表向き斉に臣従し、裏では有能な人間を集めて、斉を討つ機会を窺っていました。
そして、いよいよ斉にケンカを売る、というシーンは、興奮、感動したのを覚えています。
(最終的に、楽毅が斉のほとんどを制圧する)
・趙王とクーデター派の戦い
(この趙王は、楽毅が戦った趙王ではないです。次の代の王)
趙王の臣下が、クーデター側と必死に戦い、王を守ることに努めます。
二千のクーデター兵に対して数百?だったかな。
中国の数十万規模の戦いに比べれば少数ですが、凄く読み応えがあったのを覚えています。
最終的に、王の危機を聞きつけた臣が、王を救うために援軍として、到着するシーンは、これまた感動しました。
(援軍到着を聞いた王の「聞いたか!?」と左右に確認する場面が凄く好きです)
②人物
楽毅もそうですが、登場人物が大変魅力的です。
・燕王
斉に復讐心を持ち続け、そのために、耐えに耐えてきた人物です。
復讐するために、優秀な人材を集めており、その中で楽毅を見つけ、異常に欲しがります。
一時、感情的になることもありますが、周囲の苦言を真摯に聞き入れ、訂正する姿は、本当にできた人物だと思います。
天才ではないですが、それを自覚し、周囲に助けを求め、謙虚であり、目的を諦めない頑固さを持つ。
なんといいますか、凡人なのです。
しかし、だからこそいいのです。
・中山の重心(名前を忘れたw)
楽毅の一族である楽氏とライバル関係にある人物。
特に仲がいいわけではなく、交流もなかったのですが、(どちらかというと敵対)趙に責められた時、中山のために、楽毅と話し合い、文字通り、自身の命を懸けて、国のために行動します。
登場時は、
なんか企んでいるのか
という印象を抱かせますが、最初から最後まで国のために戦った、素晴らしい人物です。
↓その他、わき役であり、名前がでませんが、印象に残っている人物(シーン)です。
・趙の見張り、将
趙の見張りが、音を感じて、話し合います。(うろ覚えです)
「なんか音がしないか」
「確かに、地面から微かに馬蹄の響きがするような」
「確認しにいくか。しかしここを動いては」
「確認しておこう。何もなければすぐ戻ればいい」
「よしいこう」
(この時、楽毅が騎馬隊で奇襲?に向かっていた)
強い国は、見張り一つとっても優秀なんだよなあ、と考えたのを覚えています。
また、とある将も
この将は、城の水を断つ方策を部下と考えており、一睡もしていない。
この一文だけですが、何故か凄く印象に残っています。
大体の物語において、重要人物以外は、何も考えず、命令に従う、という感じになっているので、このように部下もそれぞれ考えている、という点は、当たり前と言えば当たり前なのですが、新鮮に感じられました。
強い国が、ただ命令に従うだけの部下しかいないわけないのですが、これらのシーンを読むまで、基本、上が優秀で、上の指示通りにするだけで上手くいく、と知らず知らずのうちに思い込んでいたようです。実際は、そんなわけないですよね。
現代でも、会社が成長したのは、確かに社長の力ですが、下で働く人間も優秀であるからこそ、会社が大きくなるわけですから。
あとがき
楽毅は、読んでいて、鳥肌が立つような感覚に何度も襲われたので、すごく好きな本です。
小が大に立ち向かう、というシチュエーションもそうですが、登場人物が、敵味方共に魅力的です。
楽毅も完璧超人のようになっていますが、悩み、失敗したことを反省し、次につなげていきます。
楽毅の場合、自分より優れていると認めた孟嘗君という存在が大きいのだと思います。
燕王は、自分の無能さを自覚していたので、謙虚で、楽毅に限らず、優れた人間に敬意を払っています。
自分が一番優れていると考えたら、終わりですね。
(この作品では、斉王が完全にそれでした)
現在でも、自分が一番素晴らしいと考えている人間の多いこと・・・
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