てるてる氷解ブログ

人生の氷河期を乗り越える  雑記ブログ

「史記」北方謙三著 感想

北方謙三さんの作品は、水滸伝が大変面白かったので、その後

「楊家将」

「三国志」

を読み、今回の「史記」にも手をだしました。

「史記」は、中学の教科書に載っているぐらいの有名なものですが、読んだことがなかったので、興味を持ち、手に取りました。

 

内容

中国 前漢時代。

武帝の時代の話

全7巻。

 

複数の人物目線で描かれています。

・全巻通じて

  武帝 劉徹(りゅうてつ)

  桑弘羊(そうこうよう)

・前半

  衛青(えいせい)

・後半

  李陵(りりょう)

  蘇武(そぶ)

私は、無知でしたが、李陵などは、大変有名だそうです。李陵、蘇武が一発で変換できたことに驚きました。

 

印象に残っているセリフ

「私は使う方で、桑弘羊度殿は守る方だ。相容れないところがあるのは仕方がない。だからといって、桑弘羊という人物まで嫌いなわけではない」
張騫(ちょうけん)というキャラクターのセリフです。(張騫も一発変換できた)

張騫は、帝へ企画を提案する”お金を遣う側”、桑弘羊は、”管理する側”であり、

桑弘羊が、張騫の企画は、お金を大量に使うので頭が痛い、といった時の張騫のセリフです。

 

意見が合わないから”敵”というわけではない

これは、本当に私も常々思っていました。

相手と意見が違っていた時、自分と違う、自分と対立する意見だから、ということで、その相手のことを”嫌い”、と判断し、仲が悪い、ということになりますが、それは違うのでは?と。

意見が違う→だから仲が悪い、ということにはならないと考えています。

しかしながら、こう考える方も、よくおられるのです。

反対意見を出す→邪魔をするのか、俺の敵だ、という発想です。

 

いや、相手の案、考えに誤り、デメリットがあり、”こうした方が良い”、という意見を示すことは、議論として当然であり、その方と敵対するためにしているわけではないのです。

上司とかの関係でよく言われますね。「上司に意見するとか、敵対するのか」というような話。

いやいやいや。別意見を出すのがダメなら、議論の意味がないのです。より良い考えがあるなら、そっちを採用すべきなのです。それを議論する必要があるのです。より良い案を取り上げることこそ上司の仕事でしょう。

議論で、自分と違う意見が出たとたん、不機嫌になり、相手の話を聞かないような態度を見るのは、正直不快になります。

討論するような番組でしばしばみられる光景です。こういう態度をする方は、基本的に良い印象を持ちません。見るのも嫌になります。

 

また、このセリフ、相手の立場のことも考えているのが印象深いです。

 

私が好きな登場人物

・李広(りこう)

漢という国の軍のトップにいる人物です。

守りのスペシャリスト。

人格者であり、帝、文官、他の武将、部下たちに好かれています。

(嫌っている人がほとんどいない)

 

好きな点

・人格者、常識人でありながら、常識をよしとはしていない。

・自分のやり方に誇りは持ちつつ、それが全て、正しいとは考えていない

・いくつになっても反省、成長する

・人間味がある 

 

衛青(攻めのスペシャリスト)が現れ、軍トップの座を衛青に譲ることになります。

彼は、トップであるという誇りは持ちながらも、衛青の実力を認め、衛青がトップになることを心から認めます。

理解力があり、素直に現実を受け入れることができる人間です。

 

また、実力のある衛青を認めるが、同時に劣等感のようなもの、プライドを持っています。

高齢であっても、衛青を参考にし、攻めの部隊を作ろうとしたり、自分を落とした人物に不満、悪感情を持つのでなく、現実を見て、自分にない部分を反省し、改善しようとしている姿勢が好印象です。

 

私は、反省し、改善、成長していくキャラクターが好きです。

この李広も、自分がやってきたことに誇りは持ちつつも、それだけではいけないと、自らを変えるだけでなく、孫にもそれを教えています。(自分のしてきたことを正しいものとして押し付けない)

 

また、彼の感情は、何かと理解できるのです。

例えば、

軍のトップである衛青が、李広の孫に馬をプレゼントすることになりました。

孫は自分が育てているという自負、そして自分が選んだ馬をプレゼントしてやろうとしていた李広は、自尊心が傷つけられた思いを持ちます。

これは正直、衛青に配慮が足りないとも思えるシーンですが(李広に、衛青の馬の中から選ばせて、李広からのプレゼントとすべきだった)、こういう、聖人君子でないといいますか、大きすぎる人間でないといいますか、誰もが持っている人の小ささ、がある点が、逆に魅力に感じているのかもしれません。

大きすぎると、感情移入できませんからね。

 

そのほか、この作品は、司馬遷、蘇武、と、成長していく人物が多く描かれ、彼らも私の好きなキャラクターです。

 

あとがき

上記の通り、私がこの作品で印象に残ったセリフ、人物は、以下の点があるためですね。

①議論を自分の話を言うだけの場ではないということ

②自分のしてきたことが正しい、としていない

 

①は、自分の話したい事のみを話し、他人の意見を一切聞かないという姿勢が嫌いだからです。著名人の議論の場でも見られる光景で、私としては、見るのも嫌な大変不快なことです。

また、自分の意見以外は敵、という考えも嫌いです。

というのも、身近な人物である私の親がこれだからです。親の言う通りが絶対で、反論は許さない、聞かない、という姿勢でした。

 

②については、これも私の親でもあるのですが、

「俺のやり方が正しい。だから俺の言う通りにしていればいい」

ということで、勉強の仕方等、自分のやり方が素晴らしいものとして押し付けてきたので、それを嫌だったためです。

こういう考えを間違っていると考えているため、この点が強く印象に残っているのでしょう。

 

自分の考え、生きてきたことに誇りを持つのは、結構ですが、世界は広く、人一人が知らないことは、たくさんあります。

人は神ではないのです。自分の考えが絶対的に正しいわけありません。

柔軟に、他者の考えも聞くことが重要かと。

自分の意見を曲げること、自分のしてきたことを否定することは、負けではありません。